VOCALOIDの青いお兄さん中心に好き勝手に書き散らしてるブログ。オフライン情報がメイン。
作品はピクシブにて公開中。ジャンル雑多になりつつあります。
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間が開いてしまってすみません。ようやく3話です。グッコミまで、つじつまが合うように頑張ってみます。
**********
一人で寝るには広いベッドで、彼は寝ていた。
穏やかに……というわけでもないようだ。かすかにだが、眉間にしわがよっている。
「あの、『マスター』……」
起こすために口から出た言葉に、自分でも驚いた。
すんなりと、彼を『マスター』と呼べたことに。
機械だからインプットされればそれに従う。
いつだったか博士のことを『マスター』と呼んでもいいかと訊ねたときのことを思い出す。
困ったように笑って、「その単語は君たちにとって特別なものだから」とやんわりと拒否をされた。
でも、今呟いた言葉が『特別』な響きを持っているとは思えない。
……こんなことなら、一度くらい呼ばせてくれてもよかったのに……。
そんなことを思いながら彼を見る。
起きる気配はない。
「あの……」
再度声をかけると、もぞり……と寝返りを打ち、瞼が薄く開けられた。
一瞬、怪訝そうな表情を浮かべたすぐに、「ああ……」という短い声が聞こえる。
「悪い……まだ、少し寝かせ……」
言うのももどかしい。そんな空気をまとって、体を横向きにする。
「向かいの、部屋にパソコン……その中に今まで作った音……」
のろのろと行くべき場所を示され、特にやることもないのでそれに従った。
純粋にどんな曲を作っているのか興味もあった。
寝室のドアを閉めて、リビングを通り向かいの部屋のドアを開ける。
パソコンデスクとシンセサイザーだけがぽつんと置かれていた。
パソコンを立ち上げて、それらしいファイルが入っているフォルダをあさり始める。
「これか……」
該当するファイルをひとつずつ開いていく。
意外、というかなんというか……。
彼の印象からは想像も付かない曲調だった。
ロックやポップスだと思っていたのだが、開いていくファイルのどれもがバラードやアンビエント。たまに、ミディアム・テンポのものもある。
静かにゆっくりと流れていく音たち。
綺麗にまとまっている――それが、曲の第一印象。彼自身の第一印象とはまるで違う。
一通り聞いた後、もう一度聴いていく。音の運び方に気になるところはなかったけれど、なにかがひっかかっていた。
……ああ、そうか。綺麗なだけ、なんだ。表面だけをなぞるような音たち。
一度聴いてしまえば、きっと満足して耳にあまり残らないのだろう。
「……もったいないな」
こんなにいい音なのに。なにかが足りないせいで、希薄になってしまっている。
パソコンに耳を近づけて、目を閉じる。
「ああ、そうか……」
彼も俺も『欠けている』というところで似ているのかもしれない。だから、彼は俺をここにいさせてくれるんだろう。
自分の考えに唇が小さく歪んだ。
ツクリモノと人間が似ているなんて……。
「ありえないだろう」
同意する声も否定する声もなく、パソコンから流れる音楽だけが耳に届いた。
一人で寝るには広いベッドで、彼は寝ていた。
穏やかに……というわけでもないようだ。かすかにだが、眉間にしわがよっている。
「あの、『マスター』……」
起こすために口から出た言葉に、自分でも驚いた。
すんなりと、彼を『マスター』と呼べたことに。
機械だからインプットされればそれに従う。
いつだったか博士のことを『マスター』と呼んでもいいかと訊ねたときのことを思い出す。
困ったように笑って、「その単語は君たちにとって特別なものだから」とやんわりと拒否をされた。
でも、今呟いた言葉が『特別』な響きを持っているとは思えない。
……こんなことなら、一度くらい呼ばせてくれてもよかったのに……。
そんなことを思いながら彼を見る。
起きる気配はない。
「あの……」
再度声をかけると、もぞり……と寝返りを打ち、瞼が薄く開けられた。
一瞬、怪訝そうな表情を浮かべたすぐに、「ああ……」という短い声が聞こえる。
「悪い……まだ、少し寝かせ……」
言うのももどかしい。そんな空気をまとって、体を横向きにする。
「向かいの、部屋にパソコン……その中に今まで作った音……」
のろのろと行くべき場所を示され、特にやることもないのでそれに従った。
純粋にどんな曲を作っているのか興味もあった。
寝室のドアを閉めて、リビングを通り向かいの部屋のドアを開ける。
パソコンデスクとシンセサイザーだけがぽつんと置かれていた。
パソコンを立ち上げて、それらしいファイルが入っているフォルダをあさり始める。
「これか……」
該当するファイルをひとつずつ開いていく。
意外、というかなんというか……。
彼の印象からは想像も付かない曲調だった。
ロックやポップスだと思っていたのだが、開いていくファイルのどれもがバラードやアンビエント。たまに、ミディアム・テンポのものもある。
静かにゆっくりと流れていく音たち。
綺麗にまとまっている――それが、曲の第一印象。彼自身の第一印象とはまるで違う。
一通り聞いた後、もう一度聴いていく。音の運び方に気になるところはなかったけれど、なにかがひっかかっていた。
……ああ、そうか。綺麗なだけ、なんだ。表面だけをなぞるような音たち。
一度聴いてしまえば、きっと満足して耳にあまり残らないのだろう。
「……もったいないな」
こんなにいい音なのに。なにかが足りないせいで、希薄になってしまっている。
パソコンに耳を近づけて、目を閉じる。
「ああ、そうか……」
彼も俺も『欠けている』というところで似ているのかもしれない。だから、彼は俺をここにいさせてくれるんだろう。
自分の考えに唇が小さく歪んだ。
ツクリモノと人間が似ているなんて……。
「ありえないだろう」
同意する声も否定する声もなく、パソコンから流れる音楽だけが耳に届いた。
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