忍者ブログ
VOCALOIDの青いお兄さん中心に好き勝手に書き散らしてるブログ。オフライン情報がメイン。 作品はピクシブにて公開中。ジャンル雑多になりつつあります。
[24]  [23]  [22]  [21]  [20]  [18]  [15]  [14]  [13]  [12]  [11
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

間が開いてしまってすみません。ようやく3話です。グッコミまで、つじつまが合うように頑張ってみます。










**********


 一人で寝るには広いベッドで、彼は寝ていた。
 穏やかに……というわけでもないようだ。かすかにだが、眉間にしわがよっている。

「あの、『マスター』……」

 起こすために口から出た言葉に、自分でも驚いた。
 すんなりと、彼を『マスター』と呼べたことに。
 機械だからインプットされればそれに従う。
 いつだったか博士のことを『マスター』と呼んでもいいかと訊ねたときのことを思い出す。
 困ったように笑って、「その単語は君たちにとって特別なものだから」とやんわりと拒否をされた。
 でも、今呟いた言葉が『特別』な響きを持っているとは思えない。
 ……こんなことなら、一度くらい呼ばせてくれてもよかったのに……。
 そんなことを思いながら彼を見る。
 起きる気配はない。

「あの……」

 再度声をかけると、もぞり……と寝返りを打ち、瞼が薄く開けられた。
 一瞬、怪訝そうな表情を浮かべたすぐに、「ああ……」という短い声が聞こえる。

「悪い……まだ、少し寝かせ……」

 言うのももどかしい。そんな空気をまとって、体を横向きにする。

「向かいの、部屋にパソコン……その中に今まで作った音……」

 のろのろと行くべき場所を示され、特にやることもないのでそれに従った。
 純粋にどんな曲を作っているのか興味もあった。
 寝室のドアを閉めて、リビングを通り向かいの部屋のドアを開ける。
 パソコンデスクとシンセサイザーだけがぽつんと置かれていた。
 パソコンを立ち上げて、それらしいファイルが入っているフォルダをあさり始める。

「これか……」

 該当するファイルをひとつずつ開いていく。
 意外、というかなんというか……。
 彼の印象からは想像も付かない曲調だった。
 ロックやポップスだと思っていたのだが、開いていくファイルのどれもがバラードやアンビエント。たまに、ミディアム・テンポのものもある。
 静かにゆっくりと流れていく音たち。
 綺麗にまとまっている――それが、曲の第一印象。彼自身の第一印象とはまるで違う。
 一通り聞いた後、もう一度聴いていく。音の運び方に気になるところはなかったけれど、なにかがひっかかっていた。
 ……ああ、そうか。綺麗なだけ、なんだ。表面だけをなぞるような音たち。
 一度聴いてしまえば、きっと満足して耳にあまり残らないのだろう。

「……もったいないな」

 こんなにいい音なのに。なにかが足りないせいで、希薄になってしまっている。
 パソコンに耳を近づけて、目を閉じる。

「ああ、そうか……」 
 
 彼も俺も『欠けている』というところで似ているのかもしれない。だから、彼は俺をここにいさせてくれるんだろう。
 自分の考えに唇が小さく歪んだ。
 ツクリモノと人間が似ているなんて……。

「ありえないだろう」

 同意する声も否定する声もなく、パソコンから流れる音楽だけが耳に届いた。

 
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最新コメント
プロフィール
HN:
月森
性別:
女性
自己紹介:
紅茶と音楽とパイの実があれば生きていけるかも知れない、のんびりとした文字書きです。更新速度が遅めで申し訳ないです……。

Twwiter:m_forest
Pixiv:月森

なにかかありましたらこちらから。


ブログ内検索
最古記事
(09/20)
(03/25)
(04/07)
(08/19)
(12/07)
アクセス解析
忍者ブログ [PR]