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VOCALOIDの青いお兄さん中心に好き勝手に書き散らしてるブログ。オフライン情報がメイン。 作品はピクシブにて公開中。ジャンル雑多になりつつあります。
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「たっだいまーっと」

 着ていたコートを脱ぎながらそう口にしたジャンの動きが、ぴたりと止まる。

「ジュリオ?」

 いつもなら、自分がドアを開ける前に立っていたり、飛んで迎えに来るのだが今日はそれがない。
 リビングから零れる明かりが、でかけていないことを示している。
 なにかあったのかと首をひねりながらリビングに向かい、またジャンの足が止まった。
 ガラス張りの扉の向こうにある大して広くないソファー。そこにジャンの視線は注がれていた。
 ソファーの端から少しはみ出している、紫の髪とつま先。
 湧き上がる微笑ましさのまま唇を緩めながら、そっとドアを開けた。
 なるべく音を立てないようにしながらソファーへと近づく。
 
 ――――よく寝てんなー……。

 しゃがみこんでじっくりとジュリオの顔を見る。
 規則正しい呼吸音とそれに合わせて上下する胸。
 穏やかな寝顔はまるでお伽噺から抜け出してきた王子のように整っている。
 
 ――――最近、仕事ばっかだったし、な。

 このまましばらく寝かせておこうと思い、毛布を取りに立ち上がる。――と、ギッと床が短い悲鳴を上げた。

「ん……」
「悪ぃ、起こし……」

 慌てて振り向きながら謝罪の言葉を口にするが、瞳はまだ閉じられていた。
 起きなかったことにほっとしながらも、首をひねる。
 ジュリオなら今の物音で起きてもおかしくないはずだ。
 思わず、眠り姫のようなジュリオをじっと見つめてしまう。

 ――ぴくり、とジュリオの頬がわずかに跳ねた。

「…………」

 ――――なるほど。

 ジュリオの思惑に気付いたジャンの顔が、いたずらを思いついたような子供のそれになる。

「――オヒメサマを起こすのは魔法のキスだったっけか?  ……ま、この場合王子だけどな」
 
 誰に聞かせるでもなく呟くと、眠っているジュリオのそばまで戻り、体をかがめる。
 唇が重なるまであともう少し――というところで、ジャンは思い出したように声を上げ、体を起こす。

「俺、鍵締めたっけ?」

 そう言いながらソファーから離れようと踵を返す。ドアへ向かおうと足を踏み出した。だが、ジャンはそこから動くことは出来なかった。
 いつの間にか起き上がったジュリオがジャンの腕をつかんでいたせいだ。

「はよ、ジュリオ」

 なにか言いたげな瞳でこちらを見てくるジュリオに、ニッと笑って返す。

「あ……おはよう、ございます」
「腹減ってないか?」
「大丈夫、です」
「そっか」

 そんな短いやりとり。ジュリオの腕は離れることなく――それどころか先ほどよりもしっかりとつかまれている。

「どした? ジュリオ」
「あ、の……」
「んー……?」

 言葉の続きを口にしようと唇が動くが、そこからは吐息しか出てこない。
 戸惑うように視線が泳ぎ、伏せられる。

 ――――あー……俺のほうが限界っぽい?

 苦笑しながらそんなことを思っていると、意を決したのかジュリオが顔を上げてこちらを真っ直ぐに見えてくる。

「なに? なにかついてるのけ?」
「いえ、あの……ジャン、さん」
「はいはい」
「――キス、を……」

 真剣なまなざしに胸が締め付けられる。

「ホンット、可愛すぎんだろ……」
「……え?」
「なんでもねぇよ。――ジュリオ、顔上げて」
「はい?」

 きょとんとしながらも言われるままに顔を上げるジュリオの顎に手をかけると、そのまま引き寄せて口づける。

「ふ、……ぁ」
「……ん、……っ」

 侵入してきたジュリオの下に歯列をなぞられて、背骨がぞくぞくと震える。

「あ、ふっ――ぅっ……」
 
 抱き込むように背中に回ったジュリオの手を、やんわりと押さえつけながら顔を離す。

「ジャン……?」

 ぼんやりと見上げてくる瞳に苦笑しながら、額を合わせる。

「ただいま、ジュリオ」
「――おかえりなさい、ジャンさん」

 甘い声と共に近づいてきた唇を、幸せな気持ちで瞼を閉じながら受け入れた。
 
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