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VOCALOIDの青いお兄さん中心に好き勝手に書き散らしてるブログ。オフライン情報がメイン。 作品はピクシブにて公開中。ジャンル雑多になりつつあります。
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進みが遅くてすみません……。




*********



 体が大きく震え、目が覚めた。瞬時に視点をあわせられなくて、景色がぼんやりとしか見えなかった。
 クリアになってくる視界に映る景色に、顔をしかめる。
 見覚えのない天井、窓の向こうに広がる家屋。寝ている場所すらも記憶にない。
 キュル……という小さな音が頭の奥で響く。欠けている記憶を埋めるように、処理が始まった。
 ……ああ、そうだ。昨日拾われて、そのままいることになったんだ。
 俺を拾ってくれた人――今はマスターと呼ぶべきか――の情報をまとめ始める。
 メイコとミクのマスターの元同期だと言っていたから、二十歳前後なのだろう。
 こげ茶色の髪に、どこか遠くを見ていた瞳。でも俺をここに置くと言ったとき
には、違ったように見えた。連れて来たものの、戸惑っているような態度だったのに……。
 短時間でどんな変化があったのだろう。

 『歌えるようにしてやる』

 面と向かって言われた声が、ふいに蘇る。
 それまでからは想像もできなかった、強い声と瞳。
 機械―俺―にはない、人間の強さ。
 ……頼ってみようか。また歌えるようになるかどうか。
 所詮、『歌う機械』だ。それから外れることも逃れることも出来ない。
 マスターを得てしまったから、壊れることすらも。
 それならば……。
 ふっと息を吐いて、視線を天井に投げる。
 逃げることも、壊れることも出来ないのなら、一度だけ、彼に『使われ』てみよう。
 歌うために作られた。歌えなくなり、廃棄するしかないと自分でも思っていた。
 絶望的な欠陥を抱えた俺を『歌えるようにする』といったのだ。
 ソファーから立ち上がり、彼が寝ている部屋の前まで移動する。
 ――また、歌えるのなら……。

 目を閉じて、昨日までの自分を振り切るように瞳を開ける。
 小さな深呼吸をして、目の前の扉をノックした。

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紅茶と音楽とパイの実があれば生きていけるかも知れない、のんびりとした文字書きです。更新速度が遅めで申し訳ないです……。

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