VOCALOIDの青いお兄さん中心に好き勝手に書き散らしてるブログ。オフライン情報がメイン。
作品はピクシブにて公開中。ジャンル雑多になりつつあります。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
5月28日に拍手を送ってくださった方、ありがとうございます!
励みになります!
**********
あちこちで聞こえる爆発音。鼻をつく煤や火の匂い。
抱えている二人を落とさないように、傷付けないように気をつけながら、あの人が待つ場所に急ぐ。
煙の向こうに細身の影が浮かび上がる。
――――帰って来れた。
ほっとして小さな息を吐き出す。向こうも安心したのか、不安げな表情に笑みが浮かべられた。
『無事でよかった! 二人も……。つれてきてくれて、ありがとう』
連れて来た二人の頭を撫でると、俺の腕を引っ張る。
『さ、早く行こう。ここは危な……!?』
あの人が反射的に振り返るのと、俺が覆いかぶさるのとどちらが早かっただろう。
すぐそばで音が弾け、破片が体中に襲い掛かる。
『……っ』
微かな痛みに瞼を閉じ、落ち着くまでこのままでいようと思った。
せっかく連れ出した二人を傷つけたくなかったし、なによりこの人を守り抜きたかった。
体に受ける衝撃が弱まり、ゆっくりと瞳を開ける。
そこに移ったのは、ぐったりと倒れているあの人だった。
『っ……、大丈夫ですか!?』
動くと背筋をなにかが伝った。袖が赤くなり、そこで血だと気付く。
あの人の服も赤く染まり始めていた。
『博士!』
『大……丈夫……。……?』
ぼんやりと俺を見つめ、ゆるゆると手が伸ばされる。
『怪我、してる……? 早く、手当て……』
『俺より貴方のほうが先でしょう!?』
どんなに血が流れても動きが鈍くなる程度で死ぬことはない。痛覚もそんなにはっきりとはしていない。
俺は作られたモノだから。この人は違う。
『大丈夫、だよ? だから、そんな顔しないで』
あやすように呟きが、不安をますます大きくさせる。
『大丈夫、大……じょぅ……』
ひゅう……というか細い呼吸とともに俺の頬にあった手が、ずるりと滑り落ちた。
『博士! しっかりして下さい!』
あのとき、あなたのいうことを聞いておけばよかった。
でも、二人を見捨てることは出来なかった。新しい妹弟たち。
なにより、あなたが彼らを大切にしていたのを俺は知っていたから。
あなたが大切にしているものを守りたかったのに、傷を付けてしまった。
――――もし、あなたの言葉通り動いていたなら、あなたは傷付かず、俺はまだ歌えていたのだろうか?
PR
この記事にコメントする