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VOCALOIDの青いお兄さん中心に好き勝手に書き散らしてるブログ。オフライン情報がメイン。 作品はピクシブにて公開中。ジャンル雑多になりつつあります。
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ラストパートになります。
今までお付き合い下さって本当にありがとうございました。また、長らく放置をしてすみませんでした。


この二人の時間が幸せに満たされてるといいなぁ……。





 暗い室内はいつもと同じはずなのに、いつもと違って見えた。
 先にベッドに腰掛けたマスターに近づきたいのに、なんとなく気恥ずかしい。

「いつまでそこにいるつもりだよ」

 笑いを含んだマスターの声に、なぜかびくりとしてしまう。
 そんな俺を見て、またマスターの笑い声が聞こえた。
 なんとなく悔しくて、足早にマスターに近づく。

「仕方ないじゃないですか。初めてなんですから」

 むっとして口にすると、一瞬の間の後、マスターがいきなり背後のベッドの突っ伏した。

「マス……」

 なにかあったのかと思った心配は、震える肩を見てどこかに吹き飛んだ。
 じっとよく観察する。もしかしなくても……。

「――笑ってますよね?」

 俺の指摘の直後、震える肩がぴたりと止まる。

「―――っやっぱり!」
「悪い、わる――んっ」

 まだ笑った表情のままのマスターに、勢いのまま口づける。
 いつかしたのとは違う、触れるだけじゃない深いキス。
 割り込むように舌で彼の歯列をなぞると、背中がかすかに戦慄いだ。

「ふ……」

 唇を離した後、マスターにまじまじと見られる。

「……なんですか?」

 若干の気まずさを感じながらも、何でもないふりをしてマスターを見返した。

「いや……やり方わかるのかと聞こうとしたところだったから」
「知識としてはありますよ」

 ほとんど反射的にぶっきらぼうに返事をしてしまったが、マスターはそれを気にすることなく「そっか……」と呟いて、俺の引き寄せた。
 性欲も理解できるようになっている、と博士から聞いた時、どうしてそんな必要のないものを……と素直に思った。
 大切な人の隣にいるだけで、満たされていて、それ以上はいらないと思っていたからだ。
 博士のそばで、俺はいつも笑っているだけだった。博士が忙しい時に多少の淋しさは感じたものの、不安になることはなかった。
 泣いたことも腹立たしく思ったことも、全部ここに来てから感じたことだ。

『感受性が豊かになったのかな』

 少し寂しげな顔で言われた言葉。今ならその意味がなんとなくわかる。
 博士のそばでは気付かなかった、育つことのなかった感情が動いていることに。
 服を脱がせて、食むようにうなじに唇を押し当てた後、胸の飾りを押しつぶすように撫でる。

「……っ、ぁ……」

 かすかに零される吐息に胸がざわめく。自分ではどうすることも出来ない何かが、体のどこかで目覚めていくような気がした。
 芯を持ち始めたそこに引き寄せられるように、口に含んだ。

「――――ッ」

 びくりと震える体を宥めるように、マスターの輪郭をなぞる。――そのまま、さらにその下に手を動かす――と。

「っ、いきなり――」
「――だめ、ですか?」

 戸惑いや羞恥で揺れる瞳をじっと見つめると、諦めるように息を吐き出された。

「……そういうわけじゃ……」
「それじゃあ、触らせて下さい。――貴方の全部に」

 一瞬だけ呆けた表情を見せたマスターはすぐに微苦笑を浮かべて、

「もう、お前の好きにしろ」

 と小さく呟いた。


 *****


 覚えてるのは熱を帯びた瞳と甘く切ない声。
 受け入れられて、求められた感覚。
 熱くて熱くて……本当にこのままひとつに溶けてしまうんじゃないかと錯覚するほどだった。


 *****

 寝返りを打とうとして、なにかにぶつかった。
 今までなかった感覚に、疑問に思いながら目を開けた。

「…………。ッ!?」

 間近にあった顔に驚いて、思わず飛び起きる。
 一緒に上げてしまった掛布団が生んだ風に、マスターの瞼がかすかに震えた。

「…………さむい」
「あ、すみません……」

 不機嫌たっぷりに睨まれながら呟かれ、恐る恐るマスターの隣に横たわった。
 ――――なにをしたかは覚えてる。それを思えば、この状況は自然なんだろうが、うまく処理できていないらしい。

「……マスター、あの……」

 寝なおそうとしていたマスターに戸惑いながら話しかけると、生返事で応対される。

「……体とか、大丈夫ですか?」
「……お前がそれ訊くのかよ」

 ――不機嫌な声。でも、多分、怒っているわけではない、と思う。
 一度睨まれた後、どこか拗ねたように――照れたように視線を外され、

「腰とありえないところが痛い」

 と小さく返ってきた。
 
「えっと……すみません――」

 苦笑交じりにそう口にすると、今度はしっかりと睨まれた。
 そっとマスターを抱きしめるように腕を回す。なにか言いたげな目を向けられたが、言葉はなかった。
 それをいいことに、完全にマスターを腕の中に閉じ込めると目を閉じた。
 俺の、マスター。俺だけの。

「――――好きです、マスター」

 聞こえるか聞こえないか、微妙な音量で呟くと、マスターの手が俺の手にそっと添えられた。
 そのぬくもりが嬉しくて、俺はもう一度同じ言葉を囁いた。――今度は耳のすぐそばで。
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